相続税の債務控除 通信光熱代など日常生活費の扱いは?

相続問題は不意に訪れます。
それまで何の予兆もなく、健康に家族が暮らしていたなら尚更です。
法人の場合は、将来を予見して代替わり(事業承継)も視野に入れた相続関係のシミュレーションを行うこともありますが、個人の相続に対する備えは、その来るべき時が訪れてから慌ててしまうという人のほうが多いでしょう。
時代の流れとともに、エンディングノートや終活といった言葉が聞かれるようにもなりました。
備えあれば憂いなし。相続に関わる人は、不幸ごとだからと問題を先延ばしにせず、日々意識することが大切です。

〇分かりにくい相続財産を「見える化」する
相続にまつわる問題の多くは、被相続人が所有している資産と負債の詳細が分からないことが原因となるケースです。
相続税の申告方法が分からなければ、経験者や専門の税理士を頼って相談すれば良いのですが、相続の対象となるものがはっきりと分からない内は話が前に進みません。

●契約に基づく資産や負債の管理は早めに
相続財産の中でその価値が大きいもの、例えば株式、有価証券や土地建物といった不動産、定期預金や生命保険など、権利証や証書、契約書があるものはすべてまとめて残しておくと良いでしょう。通帳の所在もはっきりさせておきましょう。
また、借入金や連帯債務・保証についても同様に、契約書や借用書をまとめておきます。
株式売却や定期解約、債務の完済など契約内容が終了・変更した都度、まとめた書類を整理していくと、いざというときに親族全員が家じゅうを捜索せずに済みます。

〇日常的な支出の未払いは相続債務になる?
相続税の申告をする際に、被相続人の債務が残っていれば、資産から控除する(差し引く)ことができます。
ただ、かかる費用や未払金をやみくもにすべて控除できるわけではありません。
未払金の性質と契約内容によって、控除できるものか否かを確認しながら積算しましょう。

●日常生活支出 光熱費の未払いがあったら
毎日の生活を行う上で、ライフラインの維持は欠かせません。
もし、相続発生時に、被相続人が生活費用(電話代や光熱費)の支払いを滞らせていたら、これは「被相続人が支払うべきだった費用」ですので、債務控除することができます。
水道光熱費のような生活費用は、使用した分を後払いするものがほとんどですね。被相続人が使用したものに対する支払いは亡くなった後になることも多く、加えて未払があれば同じく債務として控除できるのは当然と言えるでしょう。

●光熱費の契約内容と債務控除計算
ただし、死亡後の光熱費は控除することが出来ません。
電力会社や通信会社は、ライフライン供給の契約を月単位で行うのが通例ですが、相続債務として控除する場合は、日割り計算するかまたは契約に則って月の未払分を債務に計上するか、いずれかの方法を検討することになるでしょう。
不明な点は、小さなことでも専門家に相談して確認しておきましょう。

【著  者   長 岡  利 和】  


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