不動産の買い戻し特約とは あらましと注意点

一部不動産には、「買い戻し特約」という条件が付帯されていることがあります。この特約が付くことによって起こることや、気を付けなければいけない点は何かを探ります。

○不動産買い戻し特約とは

この特約は、不動産登記簿謄本の所有権の欄(甲)に記載される重要な特約です。不動産の買戻特約は、売買契約と同時に行い、登記をすることで効力を持ちます。そもそもの目的は、公的な宅地造成を円滑に行うために創設された特約制度と言われています。宅地造成事業を行う公社が、土地を譲り受けた後に、土地を転売しない・住宅を建てるなどの目的条件を守ってもらうためにこの特約を付しておくというのが主な使われ方です。仮に、土地を譲り受けた人が目的条件を満たさなかった場合は、定めている一定期間内であれば土地を同額で買い戻すことができるという内容になります。

○本来の目的以外で付されるのは

相手が公的機関や公団でなければ、この特約を使えないというような条件はありませんので、その利用目的によっては個人対個人の契約に用いられることもあります。その場合の多くは、借金の担保として不動産譲渡をし、返済されたら買い戻すという「不動産担保」を目的とした場合です。万が一返済が滞ってしまい、返済目処が立たなくなった場合には、この特約があることで容易に不動産を取得することができます。また、反対に借金をしている人が完済をすれば、所有権を取り戻すことができます。

○買戻特約のデメリット

借金を前提に、担保物件の目的物として買戻特約を付した場合、所有権移転に関する税金が高額になってしまいます。また、登記される買戻代金金額は事実上借金なのですが、法律上「売買代金および契約費用」と定められています。実際に金銭の授受が行われているにもかかわらず、当該物件の費用と代金を支払っているという法律の解釈となりえるのです。通常金銭の消費貸借には、法定または約上の金利を付けることができますが、特約上物件の代金としてみなされれば、金利や損害金を登記上に明記することができないという問題が起こることが想定されます。また、買戻特約登記は、期限が満了すると効力を失います。ただ、実際に効力がなくなった後でも、仮に銀行から融資を受けて、同不動産を担保とする場合には登記の抹消をするように求められることが大半です。もちろん、効力が無くなった後であれば、その登記が残存することに付いて、なんら権利関係は変わりません。しかし、特に買い戻す権利を持っているのが個人であった場合には、書類発行手数料や印紙代が必要になるため、任意では抹消手続きに応じてもらえないこともしばしばあります。相手が登記抹消手続きに応じない場合は、訴訟で判決をとるなど公的に証明できる証拠を持って抹消するしかありません。昔の登記で効力もないから・・・と、過去の買戻し特約が付いたままの登記は、仮に他の権利関係の移動が無い場合でも、買戻特約の相手方と話を進めるための時間、そして手間を考慮すると、事前に抹消しておくほうが良いです。土地建物の権利関係はトラブルになるとあと後まで尾を引きがちです。弁護士や不動産関連に通じる専門家に相談するのがよいでしょう。

【著  者   長 岡  利 和】


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