不動産の適切な所得税申告 減価償却費計算の方法

土地や建物の不動産を所有していると、固定資産税が毎年課税されます。これは市町村から納付書がとどいてから納税する地方税です。土地は所有している限り、償却要素は無いので特別な費用計算は有りませんが、3年に一度の評価替え年には、既存土地に掛かる周辺要件や開発にかかる道路事情の変化、地価の変更等を傾向として加味した再評価をし、それに基づいて一定割合を課税する方法が取られます。しかし、建物は新築時が最も価値が高く、経年数に応じて老朽化していくことは避けられません。建物に付随する設備も同様です。課税対象となる不動産の中でも建物は、一定割合を元の評価から差し引く方法でその年の資産価値を評価します。その計算を減価償却と言います。

○買い替え・売却の際に必要な取得費計算

持家を譲渡する際に、その住宅について資産価値を算定して譲渡価格が決定します。その際にこの減価償却計算が必要となるのです。減価償却は、それぞれの固定資産に税法で定められている法定耐用年数から求めた償却率を乗じて計算します。売却不動産を取得する時にどれほどの費用がかかったかを、この計算で導きだし、売却した年の確定申告で譲渡益申告をし、利益分は所得税が課税されることになります。

●取得費計算

居住用の建物を減価償却計算するときは、

建物の取得価格×0.9×償却率×経年数

によって導きます。9を乗じるのは、建物自体の残存価格を10パーセント程度と見立て、生じる最低限の価値を算出するために、90パーセント最終的に償却するという理由が元となります。建物の寿命は有るけれど、取り壊しを行わない限り、各年10パーセントはその残存価値があるだろうという意味です。償却率は、耐用年数によって決まっていますが、住宅に供した建物は、事業用と比べて使用劣化が低いものとして1.5倍の年数となっています。建物それぞれで使用方法やメンテナンスは異なり、耐久性も違ってきますが、法定で認める耐用年数は各ケースにあてはめることなく一律割合で計算します。実際にメンテナンス費用がかかっている場合は、その他取得経費として、拠出した費用を計上することになります。

●建物の構造によって減価償却率は違う

住宅用の建物には、木造・軽量鉄骨・鉄筋コンクリートなど、種類の違う構造と躯体が使われます。それぞれの構造に対して減価償却率が異なり、木造は33年、軽量鉄骨は40年、鉄筋コンクリート造は70年の居住用建物償却年数が定められています。(事業用法定償却年数の1.5倍を元に算出した耐用年数)そして、各償却率は順に0.031、0.025、0.015で、鉄筋コンクリート造の建物は数値が低いという事は、構造上丈夫で経年劣化が少ないということを意味します。現実に売却や譲渡を行った場合、その年末は必ず確定申告をして、仮に譲渡益が0の場合も申告書類を提出して、(建物や土地を売却しても利益がでなかった時も)「売却益は0です」という確定申告書を提出する必要があることはきちんと覚えておきましょう。

【著 者   長 岡  利 和】


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