相続税と証明 手持ち出しに見合う戻りを得るためには

相続と聞けば、肉親同士の醜い泥仕合を想像する人もいるでしょう。相続には無縁だから関係ない…と決めつけて余生を送るのはナンセンス。今や、一戸建てと少しの預貯金、そして生命保険があれば、相続をする人は相続税の課税対象となり得る時代です。
平成25年に税制の改正がおこなわれ、基礎控除額が4割減少しました。実は身近な問題となりつつある相続。いざという時にもめ事に発展しないように、いろんな備えが必要なのです。

〇他界をきっかけにしない 早めに皆で相談を
きちんと話し合いを事前にしていたとしても、何かと小競り合いを引き起こしてしまうのが相続問題です。親族、血族だから、そこに婚姻後の他人も絡むからこそ複雑で、人間の欲があらわになりがちです。
親が他界するというような話はタブーだ。長生きを望んでいないと思われるのではないか。そんなふうに考える気持ちもわかります。しかし、実際に被相続人にとっては知りえないもめ事ですし、財産や資産を巡って骨肉の争いが生じるなど、想像もしたくないでしょう。
他界した後の家族が、可能な限りもめず、仲良く平穏な生活を送るためにこそ、生前に相続税の話をしておくことが大事なのです。

〇他人が絡んでもめる 手持ちの出費や労力と相続税
例えば、同居をしている夫の親に介護が必要となった場合、デイケア施設利用費や日常の消耗品にかかるお金を子ども夫婦が持ち出しすることが往々にしてあります。
自分の親であれば…という思いに対して、夫婦の隔たりが起こりやすい部分です。日常的な介護は嫁の仕事。しかし、いざ相続となった場合に、自分には相続の権利がありません。夫は「自分の親の面倒を見るのが当然」という風。夫婦でもめたうえに、実家で介護をしたことでプラスの評価を得たい実の子(夫)と兄妹の確執…。他人が絡むからこそさらに相続をこじらせてしまうこともあります。

●相続財産の増加または維持に対する「寄与分」
前述した例えで、最も口惜しく思っているのは実家で介護を行った嫁でしょう。当たり前のように介護を行った上にその恩恵は無し。
もちろん、金品を譲ってもらうために介護をするわけではないでしょうが、日々の献身的な介護やお世話に全く評価がなされないような気分になってしまうかもしれません。
もし仮に、同居する親の介護をしたことで相続財産を健全に維持または増加させたとあれば「寄与分」を明確に証明することもできます。
実際に、先に述べた寄与分が嫁には認められることが無いかもしれません(嫁は法定相続人ではないので)。ただ、相続は「平等」を基準にするのではなく、血族や相続人如何によらず、「公平」に分割するという考えが皆にあれば、大きなもめ事を引き起こすことなく、冷静に粛々と遺産相続の話は進むかもしれません。
遺産に目がくらみ、大金を持つことが出来たところで、多く相続した人はその分相続税も現金払いしなければならないのです。
一度実行した相続は簡単に戻すことは出来ませんし、申告も持ち分に応じて正確に行わねばなりません。皆がより少なく、賢くもめない相続を考えて事前に話をすることが何より大切です。

【著  者   長 岡  利 和】


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