住宅ローンを組むか相続税節税をとるか 

相続税の基礎控除が4割カットされた制度改正を皮切りに、不動産を活用した相続税節税に向けた動きや話題が多くなりました。
特に不動産会社や土地活用を進める賃貸不動産経営企業の多くは、この相続税増税をチャンスと考えているでしょう。
同時に、親・子・孫世代にわたる相続や贈与に関する節税を検討する人も増えてきています。総合的に考えて、トラブルが起こりがちな相続を見越して、親族全員が納得のいく方法を探ることが何より大事です。

〇住宅ローンを組むまえに相続とマイホームを考える
核家族が当たり前…ともいえる現代社会。子どもが独立して所帯をもてば、マイホームを購入して実家から離れ、別々の生活をスタートさせることは珍しくありません。
その昔は、「兄妹の誰に実家を継がせるかでひと悶着」「長子が泣く泣く実家にもどる」という話もありました。生まれ育った実家を一度出た後、その実家とマイホーム、相続も含めてどうするかをしっかり考えておかねばなりません。

〇実家を継ぐ子に節税効果が高くなる相続税
相続財産はその額と評価が高ければ高いほど、相続税も高くなるということは想像できるでしょう。
それならば、実家などの不動産価値が低く評価されれば節税効果が高まるはず。といっても、実家をぼろぼろになるまで修繕しない・破壊するというわけではなく、「小規模宅地等の特例」を活用しましょう、という話です。

●相続税の課税価格特例を受けるには
税金を安く抑えるために特例を受けるには、それ相応の基準(条件)があります。住宅が建っている宅地の評価を最大8割カットすることが出来るという、この特例を受けるためには、 
①配偶者の相続
②被相続人と同居の法定相続人(子どもなど)が相続
③法定相続人がいない場合に自宅を持たない相続人(家なき子)が取得する 
このいずれかの場合に相続宅地評価を減額することができます。

●住宅を所有する子の相続税は減額されない
もし仮に、マイホームを購入済の子ども(法定相続人)が実家の土地を相続することになった場合、この特例は受けられません。
相続を前向きに考え始めたタイミングで、子どもからマイホーム購入の話や住宅ローンの相談があったときは、後々子どもに課税される相続税のことも考慮してアドバイスできるのが理想です。

〇二世帯住居で住宅ローンを組むと相続税節税に
子どもがマイホームを欲しいというときに、親としてはむやみに反対する理由もないでしょう。そこで、いずれは残る実家を上手く活用して、皆が住まいやすい環境を整える「二世帯住宅」にするという方法が注目されています。
二世帯住宅に改築(増築)してローンを組むことで、住宅ローン控除を受けながら実家を安全快適に改修することができ、さらに親と子世帯の生活環境を別々に整えることができます。
持ち家を取得済の子どもは特例から除外されますが、実家二世帯の子どもは現行の制度で「同居しているものとみなす」と改正されたので、相続税対策もバッチリです。
子どもと配偶者、法定相続人の相続権を巡って、後にトラブルが起こるようなことが無いように、先を見通した前向きな相続を、家族みんなで検討しておきましょう。

【著  者   長 岡  利 和】
 


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