固定資産税の特別措置と空き家・更地の関係

近年話題になることが多くなった「空き家」の問題。実家を離れて生活している子どもが家を所有し、実家の両親が他界して住む人がいない…というのが、空き家になる典型の例でしょう。
住まう人がいなくなってしまった家は、急激に朽ちていくスピードが速まります。住む人がいなくなってしまったなら、処分するか更地にしてしまえば良いのに。と思うのは、これから家を購入する人の発想かもしれませんね。
簡単に生まれ育った実家を処分することはできない、という心情のほかに、実は、家があることで税金が安くなるシステムがこの空き家問題と大きな関係を持っているのです。

○家がある=土地の税金が安くなる
土地と一戸建て住宅を購入した経験がある人なら、特例のシステムを想像しやすいでしょう。本来なら土地の評価額に一定率(1.4%)を掛けた額が、土地の固定資産税額となります。
しかし、この土地を住宅に供するために所有している場合、固定資産税額は課税標準の6分の1(200平米以下)または3分の1(200平米を越える部分)が基準になり、これに一定率を掛けて算出します。

●建物の固定資産税もあるから高くなるのでは?
実際に、固定資産税の計算をしてみましょう。判りやすく200平米ある住宅用地の課税標準額を2000万円、空き家の課税標準額を500万円とします。
仮に建物を解体して更地にしたとすれば、単純に土地だけの固定資産税で済みますね。このときの税額は2000万円×1.4%=28万円となります。
空き家と土地の固定資産税額はどうなるのでしょう。建物は通常の計算どおりとして
500万円×1.4%=7万円になります。ここで問題となるのが土地部分。
2000万円×1/6×1.4%=46666円(課税時は百円単位切捨て)となって、土地建物の合計か税額は116666円。空き家とはいえ、家が残っていれば税金が安くなる仕組みがこれです。

○管理していない空き家は対象外に
これまでは住宅用供地であれば、どんな家でも特別措置が採られていました。しかし、平成27年度の税制改正で、適正に管理されていない空き家は、住宅用地にかかる固定資産税等の課税標準措置の対象外とすることが定められました。

●解体やメンテナンスの費用に課題
空き家を所有している人にとっては、その管理をすることは非常に手間とお金がかかります。そして、更地にするために住宅を解体するにしても、数十~百万円単位の費用がかかります。
適正に管理されていない住宅は「特定空き家」として指定されます。この通知が届き、助言や指導が役所からきたら、なるべく速やかに対処しましょう。
住まう予定がない不動産をずっと自分名義で持っているだけでも、先に駆り計算したように数十万円単位の固定資産税がかかります。有効に活用するか、更地にするか、または売却するか…いずれにしても、自分の次の代にまで同じ問題を抱えていくより、有意義な選択を前向きに進めたほうがよさそうですね。

【著  者   長 岡  利 和】


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