相続時清算課税は慎重に 高い課税評価と盲点に注意

家を所有していれば相続税が掛かるかもしれない…。平成27年の相続税制改正によって、いろんな噂が広まっています。基礎控除額が引き下げられたことで、課税対象者が増加したのは事実です。実際に、相続税の計算をして、これまでは無縁だと思われていた人も、家の財産価値によっては課税されることになる可能性があります。


相続は、親族全員でいつかは話し合わねばならない問題でしょう。高い相続税を払うことになる前に、あらかじめ相続の方法や分与の話をしておくことで、子ども世代の税額を抑えられるかもしれません。
「いつか」の備えは早めに行っておく方が得策です。

○相続税と贈与をあわせて考える
相続税は、被相続人が死亡して遺産を受け継ぐときに、その資産価値に沿って発生する税金です。贈与は、被相続人が健在な間に財産を譲り受けることです。贈与を受けた場合にも贈与税という税目で課税されます。
しかし、生前贈与を親から受けるときに「相続時清算課税」を選ぶと、贈与額によっては贈与税がかからないことがあります。

●相続時清算課税とは
親・祖父母の年齢が60歳以上、贈与をうける子・孫が20歳以上の場合に限って、それぞれ2500万円までは贈与税が非課税になるという制度です。
例えば、子ども一人に対して親と祖父が生前贈与をするとしましょう。受贈者である子どもは、親からの贈与2500万円+祖父からの贈与2500万円=最大5000万円の非課税枠を得ることになります。

●相続時清算課税の注意点
実際に相続事由が起こった場合(被相続人の死亡)、それまで受けた贈与は当時の価格に沿って相続財産に加算して課税される事になります。
贈与時に課税されなかった分は、相続の時に合わせて税計算をするということです。また一度この制度を利用すると、撤回ができません。この点には注意が必要です。

○マイホームを購入する子どもへの贈与
住宅を購入する子どものために資金援助をしたいという親・祖父母もいるでしょう。住宅取得をするための資金を贈与するときは、年齢制限が外されます。
若い子ども夫婦が家を購入するとき、自己資金と返済を心配する親が子どもに援助する場合は、夫婦二人が相続時清算課税を選んで両親から最大で1億円を贈与税が掛からずに受取る事ができる計算になります。
贈与と相続は家族全員に関わります。そして、相続財産の評価は非常に難しく複雑です。
また、途中で撤回することが出来ない上、贈与税の基礎控除額110万円が利用できなくなります。
財産をいずれ子どもに相続させるなら…という親心で、同制度を使って子どもに住宅購入の資金援助をすると、もしかしたら後々、高い相続税を子どもが支払うことになるかもしれません。
親子できちんと話をして、頼るべき専門家の力も借りながら、上手く制度を利用する方法を考えましょう。

【著  者   長 岡  利 和】
 


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