持ち家の資産価値をどう考えるか 

「一戸建ての家に住む」「持ち家に住まう」ということに対して、強くあこがれを抱く世帯主は多く、結婚した女性も、どこか「自分の家」という住まい方に優越感を感じる人も少なからずいるでしょう。
世間的に、持ち家がある人はどこか「勝ち組」という意識があるように思います。しかも、それが新築住宅の場合、特に顕著なようにも感じます。

所有し続ける限り、住宅は一つの資産として考える人は少なくありません。
ただ、日本の場合は、新築住宅の資産価値を算定するには業界の通例として、20年という一つの目安となる期間があります。そのものの価値を正しく判定するというより、むしろ使用期間が基準となっているのです。

○資産価値を判断する指標は素材ではない
日本の固定資産評価は、減価償却という考え方をもとに算出します。仮に、途中で適切なメンテナンスや修復を行っていたとしても、それはあくまでも持ち家存続のために必要な行為と考えれられる風が否めません。
仮に、従来の持ち家に施していた外壁塗装剤よりも優れており耐用性がある塗装を吹きなおしても、持ち家そのものの資産価値にまったく反映されません。
新築当初の仕様と躯体、構造と間取りがそのまま、現存し続ける限りその建物の資産価値となります。

○自由設計が持ち家の資産価値に影響するか
近年話題となっている、自由設計の注文住宅。新築する家族の思い描く理想の形を実現し、楽しく快適に住まうことを提案する住宅メーカーやデザイナーも多くなりました。新築以後、ずっと住まい続ける間は、その家族が納得さえすれば非常に有意義な持ち家でしょう。
しかし、売却をすることになった時、快適に過ごしていた自慢の自由設計住宅が、思っていたよりずっと資産価値の低いものだったと感じることになるかも知れません。

●持ち家の資産価値=償却期間+万人受け
建物の資産価値は、おおむね耐用年数、償却を考えた「期間」によって算出されるということを先に記しましたが、算出した資産価値をもとにして、不動産業者などは売却可能な価格を設定することになります。
より一般的な住宅のほうが、次の購入者にも受け入れられやすく、特徴が濃い住宅にあこがれがあっても、いざ住まうことになると考えると、その中古住宅に二の足を踏んでしまう人もいます。

●資産価値を住む人の満足度で考える
自由設計した注文住宅には、所有者の趣味や、大幅な間取りの変更、仕様設備などの好みやオリジナリティが色濃く出ます。このオリジナリティが強い持ち家に興味を抱き、購入してくれる人がすぐに表れるかということを、まず不動産業者は考えるでしょう。
もし、特異な間取りや、日常の生活を制限するような箇所、使途不明なスペースが一か所でもあれば、それが転売のしづらさにつながります。そして、それでも売却をしなければならない事情があると、評価としての資産価値(価格)は下がる可能性があります。
持ち家の資産価値を金銭換算する場合、後ろ向きな話題にしかなりません。しかし、売却せずにずっとその持ち家に住み続けるということなら、家族にとって金額は評価の対象とならず、自身の満足感を得られるものとして考えていいのではないでしょうか。

【著  者  長 岡  利 和】


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