不動産を売却した時の利益には譲渡税がかかる

利益が出ればそれは所得

不動産などの資産を譲渡した際に、もしも利益が出た場合には譲渡所得となるため所得税や住民税を納付する必要が出てきます。ただし不動産の譲渡によって得た所得の場合、給与所得や事業所得等とは違う所定の税率で計算されて課税される分離課税であるという特徴があります。

不動産の所有期間の縛りに注意

譲渡所得は長期譲渡所得(譲渡年の1月1日時点で所有期間が5年を超える場合)と短期譲渡所得(譲渡年の1月1日時点で所有期間が5年以下の場合)に分類され、税額計算もそれぞれに分類されてから行われます。

この譲渡所得に関係する所有期間は、不動産取得日から譲渡した日までではなく、譲渡した年の1月1日まででカウントします。そのため5年が経過していたつもりが実はそうではなかったという場合には、高い税金を無駄に払わなくてはいけなくなります。十分注意しましょう。

譲渡所得の計算方法とは

個人が資産を譲渡して利益が出た税金の計算の基礎となる課税譲渡所得金額、及び、譲渡所得税額は、それぞれ、以下の算式によって求められます。

・課税譲渡所得=譲渡価額-(取得費+譲渡費用)-特別控除
・長期譲渡所得の税額=課税長期譲渡所得金額×税率20%(所得税15%、住民税5%)
・短期譲渡所得の税額=課税短期譲渡所得金額×税率39%(所得税30%、住民税9%)

また、平成49年までの税額には、算出された所得税を課税標準とした復興特別所得税2.1%分が加算されます。

取得費と譲渡費用について

譲渡所得を算出する際に、取得費や譲渡費用がいくらかを正確に計算する必要があります。

取得費

取得費に含めることができるものは次のような費用です。
・購入や新築した時の代金です。
・不動産を取得する際に必要になった費用で、登録免許税、印紙税、不動産取得税、仲介手数料など取得してから使用するまでの借入金の利息、測量費用、造成費用等取得をする際に直接発生した費用が該当します。増改築等の改良費や設備費も該当させることができます。

譲渡費用

売却する際に発生した次のような費用があてはまります。
・測量費用
・登記費用
・印紙税
・仲介手数料
・解体費用
・立ち退き料
などです。

損失が出た場合には?

不動産を売却したことで利益ではなく損失が発生した場合、土地や建物による所得以外の所得とは損益通算はできないことになっています。しかし不動産がマイホームの場合には、損失を控除できる特例があります。

マイホームを売却して譲渡損失が発生した場合

売却した年の1月1日時点で、売却した物件が所有期間5年を超えるマイホームの場合には譲渡損失の金額をその年の他の所得と損益通算することが可能です。

・新しくマイホームを買換える場合に適用される特例
マイホームを売却した年の前年から翌年までの3年間に新しくマイホームを取得し、年末の段階で新しいマイホームの取得についての住宅ローン残高がある場合には、一定の要件の下で発生した損失の金額について損益通算・繰越控除を行うことが可能です。

・新しくマイホームを買換えない場合に適用される特例
マイホームの譲渡契約締結日の前日時点で住宅ローン残高が残っている場合、一定の要件の下で損失金額について損益通算・繰越控除を行うことが可能です。

ここでもしも通算しきれない譲渡損失が発生した場合には、その翌年から3年内の各年の所得から繰越控除が可能です。

不動産を譲渡した際には税金が発生することをお忘れなく

一見不動産の売却と所得税は何も関係がないように感じるかもしれませんが、利益が出れば譲渡所得として所得税や住民税の課税対象です。ただし利益と損失のどちらが発生しても特例措置が準備されています。使える特例はケースバイケースのため、どれにあてはまるかを確認してみましょう。

【著者 長岡 利和】


投稿日

カテゴリー:

最新記事一覧