不動産購入で手付金が必要な場合とその相場は

土地や建物の購入は、通常買い物をして支払うシーンと同様に手軽に買えるような金額ではありません。購入する立場としては、生涯をかけてその家と土地を使用し、価値ある時間と家族のだんらんを実現しようと思い立つ唯一無二の資産と言えるでしょう。

ただ、購入する側はこれほどの覚悟を決める程の金額ですから、販売する側の工務店や住宅メーカー、不動産業者にとっても最良の購入相手と巡り合って、住宅資金と支払いに関するトラブルはなるべく避けたいというのが本音です。
資金トラブルは生々しく、端的に決着がつくものではありません。購入代金を完済するまでに何事もないのが最も理想的ですが、途中でやむをえない事情によって契約や取引を白紙に戻すという場合もあります。
その時に、可能な限り問題と傷口を広げず、双方納得の上で契約解除をする手段として用いられるのが「手付金」です。

○手付金の性質
一般的に手付金には、主に3種類の意味合いがあります。証約手付・解約手付・違約手付があり、不動産売買の時は「解約手付」の意味を以って金銭の授受を行います。

●解約手付をどう使うか
本来なら売買契約が成立すれば、完成を待って引き渡しを受け、それと同時に住宅購入費を支払うというのが通常の「買い物の時の清算方法」です。
しかし、住宅を購入するという口約束や契約書一枚で、数千万単位の買い物がスムーズに終了する保障はありません。
契約をして引き渡しに向けて尽力している住宅メーカーが、代金支払いの前にお客から一方的に「いらないから代金も払わない」と言われてしまうと、会社は健全に経営することができません。
契約を締結する時に手付金を入れ、手付けの取り扱いも一緒に契約条項に記載しておきます。解約手付の場合、購入者側の理由で契約解除するなら売主は手付けを返還しない契約にします。
売手側の理由で契約解除に至った場合は、受け取った手付けの倍額を買主に支払って契約解除をすることができます。

○手付けの相場は
宅地建物取引業法では、報酬の定めはあるものの手付金の明確なガイドラインはありません。
しかし、解約手付の場合、手付けの相場は5パーセント前後で、一部10パーセントという人もいました。
ただ、この相場割合も不動産業界の慣例による処が大きく、多くの場合、5パーセント以下で売買契約が整います。5パーセントと聞けば大した金額ではないというイメージをもつ人もいるかもしれませんが、数千万円の元額に対する5パーセントはとてつもなく大きな金額です。
その手付けをあっさりと流すことができるか、また売主にとってはその手付けの倍額を払ってでも解約しなければならない事態かを、冷静に考える時間を与えるという目的もあるでしょう。
一度互いに締結した契約なら、最後まで取引に問題やトラブルなく終えたいという気持ちになります。ただ冷静な目を以って双方の利益につながるように、内容の濃い契約が実現できる準備と布石を置いておくことも大切です。

【著  者   長 岡  利 和】


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